配信事業の先に見据えた未来

――観る側にとっての、ドキュメンタリー映画の魅力は何だと思われますか。
ドキュメンタリー映画は制作に時間がかかります。10年かけたものも少なくありません。長期間の撮影を通じて、登場人物の価値観の変化や成長が見えてきます。それを60~90分の短い時間で垣間見ることができるのです。遠くから眺めるのではなく、その人の視点で疑似体験。もちろん作家の視点も入っていますが、この疑似体験は人間の経験値として大きいものだと思います。
――今後、どのようなビジョンを描いていますか。
配信事業で収益が上がる仕組みを作ることが当面の課題です。ゆくゆくはアジアンドキュメンタリーズが自ら制作した作品も世に出したい。もっと海外に発信できるような作家を育てていきたいという思いもあります。昨年からは「東京ドキュメンタリー映画祭」に協賛もしています。サブスクリプションで、安定してドキュメンタリー映画を制作、配給、配信していくことが目標です。
今まで日本の映画業界の優先順位は、映画、パッケージ(Blu-ray、DVD等)、テレビ放送と続き、配信は後回しでした。しかし、コロナ禍を経て、状況は着実に変わってきています。配信が先で、その次に映画館上映があってもいい。配信で観た作品を大スクリーンで観たい、というお客さんがいることも知っています。ゆくゆくは自社で映画館を持つことも夢見ています。
アジアで、どの国にも偏らない、ドキュメンタリーのメディアに成長させるために、意欲のあるドキュメンタリー作家と連携しながら、これからも良質な作品を配信し続けたいと思っています。
(2021年12月取材)

伴野 智(ばんの さとる)
1973年2月20日生まれ。
大阪府吹田市出身。
立命館大学在学中より映画製作を始める。
卒業後はケーブルテレビ局に勤務の後、映像制作会社に入社しプロデューサーや監督として活躍。
2020年に退社し、自身が立ち上げた映像配信サービス「アジアンドキュメンタリーズ」の社長を務める。