日本のドキュメンタリーが置かれた状況

――ドキュメンタリー衰退の原因はどこにあると思われますか。
日本のドキュメンタリーは、映画ではなくテレビに頼ってきた歴史がありますが、そのテレビが衰退しています。特に若い世代が見ていない今、ドキュメンタリーは絶滅危惧種のようなもの。そのあたりが非常に危うい、危機的状況なのです。視聴者も放送枠も、制作費も減っていて、取材を深めることができず、映像のクオリティも高められない。負のスパイラルに陥っていても放置され、打つ手がありません。
それでも気概のある作家が作品を作り続けていますが、あまりに厳しい状況です。まず制作費が少ないこと。海外では1本2000万~2億円ぐらい資金を集めて制作されますが、日本では200万~1000万円くらいです。しかも映画の場合、低予算で制作しても回収ができる保証はありません。劇場鑑賞料が1800円として、半分は劇場、そこから20%は配給会社の取り分です。宣伝経費なども含めると収益は1人500円ぐらい。仮に500万円で作った場合、1万人動員してやっと制作費がペイできるのですが、1万人動員するは大変なことです。あとは配信とパッケージですが、DVDはそんなに売れませんから、配信しかないのです。しかし配信の収益率はもっと低い。
今やドキュメンタリーを作るのは異端児。「そんな儲からない、暗い感じのものはやめてくれ、お荷物だ」と言われるありさまです。
――作る文化も見る文化も育っていないのですね。
育っていないどころか後退しています。それを食い止めないといけません。テレビは視聴率や広告が関わってくるのでいろいろな制約もあり、忖度もある世界。伝えられることが限られます。しかも、全国ネットのドキュメンタリーでさえ、1本あたり数百万の予算しかありません。それでも、何度も海外に取材に行ったり、1年がかりで追いかけたりもしている。予算のほとんどが経費で消えてしまいます。制作プロダクションはドキュメンタリーではなかなか食べていけないのです